
チラシを頼まれたけど、何から手をつければいいの…?
前回の記事では、デザインの基本6原則「近接・整列・強弱・反復・簡単・統一」を紹介しました。
今回は、その6原則を使って、実際にチラシを作るときの手順を解説します。
いきなりパソコンを開いて作り始めると、途中で手が止まってしまったり、逆に時間がかかりすぎてしまったりします。「何を大きくすればいいんだろう」「この情報、どこに入れよう」と迷ってしまうからです。大切なのは、デザインを始める前に「準備」をすることです。
チラシ作りの全体の流れ
まずは、全体の流れを確認しましょう!
作り始める前に、紙のサイズや色、締め切りなどの条件を確認しましょう。
チラシを受け取る人の視点に立って、情報をまとめましょう。
実際のチラシに掲載する必要事項(情報)を整理しましょう。
まとめた情報を元に、ラフスケッチを作成しましょう。
ラフの段階で、発注者や共同制作者などの意見を聴きましょう。
デザインソフトを使って清書し、完成したら情報に間違いがないか確認しましょう!
STEP1:作り始める前に、条件を確認する
デザインの話に入る前に、発注者や共同制作者などに次のことを確認しておきましょう。あとから「実はA3でした」となると、すべて作り直しになってしまいます。
チェックリスト
- サイズ:A4?A3?縦?横?
- 印刷方法:家庭用プリンター?印刷会社?カラー?白黒?
- 配り方:掲示する?手渡し?ポスティング?回覧?
- 締切:いつまでに印刷・配布したい?
- 素材:使ってほしい写真・ロゴはある?
解説:実際にチラシを作ってみよう!
今回は「はじめてのカメラ講座」の開催をお知らせするチラシを題材に、企画からデザインまで、チラシ作りの具体的な手順をステップごとに解説します。
- サイズ:A4縦
- 印刷方法:印刷会社にカラーで100枚
- 配り方:公民館・図書館のチラシラックに置く。市のホームページにもPDFで載せる
- 締切:講座の1か月前までに配布開始
- 素材:講師が撮った写真を使ってほしい
STEP2:受け手の視点で5W1Hを考える
1つ目の5W1Hは、このチラシを受け取る人の視点で考えてみましょう。
| 5W1H | 意味 | 今回のチラシの場合 |
|---|---|---|
| When | このチラシを、いつ見てもらう? | 休日、こどもを連れて図書館に来たついで |
| Where | このチラシを、どこで見てもらう? | 公民館や図書館のチラシラックの前。持ち帰って、家でもう一度見る |
| Who | 誰に届けたい?(ターゲット) | 子どもの写真を撮りたくてカメラを買ったけれど、オートモードのままの30〜40代 |
| What | 何をいちばん伝えたい? | カメラの基本が、初心者でも2時間で分かること |
| Why | 受け手にとって、なぜ大切なの? | こどもの「今しかない瞬間」を、思いどおりに残せるようになるから |
| How | 見た人に、どうなってほしい? | 申し込んで、カメラを持って参加してほしい |
受け手の5W1Hが、デザインを決める!
この6つが整理できると、どんなデザインの方向性にしようかイメージが湧きやすくなります。
- When:図書館のラックを見た瞬間
- Where:ラックに並ぶほかのチラシの中から、手に取ってもらう必要がある。上半分で目を引くことが大切
- Who:子育て中の親。やさしく、親しみやすい雰囲気に。専門用語は使わない
- What:これが、チラシでいちばん大きく見せるもの(タイトル・キャッチコピー・写真)になる
- Why:キャッチコピーに入れる「参加したくなる理由」になる
- How:申込方法と締切を、迷わず分かるように置く
同じカメラ講座でも、写真が趣味のシニア向けなら話が変わります。落ち着いた色で、文字をもっと大きくしたほうが届きます。誰が、どこで見るかによって、最適なデザインは変わります。おしゃれにしたい!目立たせたい!という気持ちは、いったん横に置きましょう。どんな人が、どんな場面で見るのかが決まれば、色も書体も、選ぶ理由がはっきりします。
STEP3:チラシに載せる情報を5W1Hで整理する
次に、チラシに載せる情報を5W1Hで書き出します。ここでは、正確さが大切です。
| 5W1H | 意味 | 今回のチラシの場合 |
|---|---|---|
| When | いつ行う? | 6月12日(土)10:00〜12:00 |
| Where | どこで行う? | みどり台公民館 2階 講座室 |
| Who | 誰が行う? | 主催 みどり台公民館(TEL 0000-00-0000)/講師 写真家 青木 晴 |
| What | 何をする? | 明るさ・ピント・構図の基本を学び、公民館の中庭で実際に撮ってみる |
| Why | なぜ行う? | 写真を通して、毎日の暮らしを楽しむ人を増やすため |
| How | どのように参加する? | 先着12名。参加費500円。5月31日(月)までに、電話または申込フォームで申し込む。持ち物はカメラ(ミラーレス・一眼レフ。貸出あり、先着3名) |
載せない情報も決める
書き出してみると、載せたい情報がたくさん出てきます。でも、全部載せると、いちばん伝えたいことが埋もれてしまいます。受け手が申し込もう!と決めるのに必要な情報だけを残しましょう。
- 申し込むかどうか決めるのに必要?:載せる(日時・場所・参加費・定員・持ち物・申込方法)
- 詳しく知りたい人だけが見ればいい?:QRコードでホームページへ(講師の経歴・作品など)
- 申し込んだ人だけが知っていればいい?:申込後の案内へ(当日の流れ・雨の日の撮影場所など)
2つの5W1Hを整理する
STEP4:ラフを描く(7:3)
情報が揃ったら、いよいよラフ(下書き)を描きます。いきなりパソコンで作るのではなく、まずは紙とペンで描きましょう。うまく描く必要はありません。どこに何を置くかがわかれば十分です。
紙面を「7:3」に分ける
チラシの紙面を、大きく7:3に分けて考えます。
【画像:flyer_rough_73(7:3のラフ図)】
- 7の部分:タイトル・キャッチコピー・写真やイラスト、そして日時などのいちばん大切な情報(目を止めてもらう場所)
- 3の部分:場所・参加費・持ち物・申込方法・問い合わせ先などの詳しい情報(じっくり読んでもらう場所)
チラシは、まず「見られて」、興味をもったら「読まれる」ものです。7の部分で手に取ってもらい、3の部分で「申し込もう」を後押しします。7の部分に日時まで入れておくのがポイントです。ぱっと見ただけで「何が・いつあるのか」が分かれば、3の部分を読まなくても、予定が空いているかどうかを判断できます。
2つの5W1Hは、7と3に振り分ける
STEP1とSTEP2で整理した5W1Hは、7と3の部分にそのまま振り分けられます。
- 受け手の5W1H(What・Why)→ 7の部分のタイトル・キャッチコピー
- 情報の5W1Hのうち、いちばん大切なもの(いつ)→ 7の部分
- 情報の5W1Hの残り(どこで・誰が・どう参加)→ 3の部分
チラシ例
- 7の部分:タイトル「はじめてのカメラ講座」+キャッチコピー「オートモード、卒業しよう。」+カメラを構える写真+「6月12日(土)10:00〜12:00」
- 3の部分:場所・参加費・定員・持ち物・講師・申込方法と締切・問い合わせ先
【画像:完成チラシ(はじめてのカメラ講座)に7:3の線を重ねたもの】
キャッチコピーは「受け手のいいこと」を書く
タイトルとキャッチコピーは別物です。
【囲み】
- タイトル:何の講座か(例:はじめてのカメラ講座)
- キャッチコピー:参加すると、どんないいことがあるか(例:オートモード、卒業しよう。)
「カメラ講座を開催します」は主催者の言葉です。受け手の5W1Hの「Why(受け手にとってなぜ大切か)」から、相手が得をする言葉を探しましょう。
視線の流れを意識する
人の視線は、決まった順番で紙面を動くと言われています。文字の少ないチラシなら「Z型」、縦書きなら「N型」が基本です。
【画像:21_eye_flow】(全部盛り記事と共通)
横書きのチラシなら、左上から右下へ。視線のスタートになる上側に7の部分を、ゴールになる下側に3の部分(申込方法や問い合わせ先)を置くと、自然な順番で読んでもらえます。
デザインの心理効果
ラフで配置や雰囲気を決めるときは、人が「なんとなく」感じる印象を味方につけましょう。
■ 色がもつイメージ
- 赤:情熱・元気・食欲(セール、飲食店)
- オレンジ:親しみ・にぎやか(子ども向け、イベント)
- 黄:明るい・注意・希望(注意喚起、キャンペーン)
- 緑:安心・自然・健康(環境、医療、食品)
- 青:信頼・誠実・冷静(企業、行政、金融)
- 紫:高貴・上品(美容、和のデザイン)
- 黒:高級・重厚(高級品、ファッション)
- 白:清潔・シンプル(医療、ミニマルなデザイン)
同じ色でも、トーンや文化、年代によって受け取り方は変わります。カメラ講座なら、子育て中の親に向けて、やわらかいトーンのオレンジや緑が合いそうです。
■ 形がもつイメージ
- 丸:やわらかい・やさしい・親しみやすい
- 四角:安定・信頼・きちんとしている
- 三角:動き・鋭さ・上昇
【図版23:形の印象比較】
タイトルを丸の中に入れるか、四角い帯にのせるか。そんな小さな形の選択が、全体の印象を左右します。
■ 人は「まとまり」で見る
人の脳は、バラバラの要素を、まとまりとして見ようとします(ゲシュタルトの法則)。
【囲み】
- 近いものはグループに見える → 6原則の「近接」
- 色や形が似ているものはグループに見える → 「反復」「統一」
【図版24:ゲシュタルトの法則】
7の部分と3の部分の間に、余白や色の帯で区切りを入れると、2つのまとまりとして読んでもらえます。
■ チラシに効く心理効果
【囲み】
- 孤立効果:似たものの中に1つだけ違うものがあると目立つ。締切だけ色を変える、など(強弱)
- ヒックの法則:選択肢が多いほど迷う。申込方法は1〜2つにしぼる(簡単)
- 単純接触効果:何度も目にするものに好感をもつ。毎回の講座チラシで色やロゴをそろえる(反復・統一)
ラフは2〜3案描く
ラフは、1案だけでなく、2〜3案描いてみましょう。写真を大きく使う案、キャッチコピーを主役にする案など、方向性を変えてみるのがおすすめです。
比べてみることで「やっぱりこっちが伝わるな」と、自分でも判断しやすくなります。
STEP4:ラフの段階で発注主に見てもらう
ここが、この記事でいちばん伝えたいポイントです。
ラフができたら、清書する前に、必ず発注主に見てもらいましょう。
【吹き出し:困った顔】完成させてから見せたほうが、喜んでもらえるんじゃない…?
そう思うかもしれません。でも、作り込んだあとに「やっぱり写真はこっちで」「この情報をいちばん大きくしてほしい」と言われると、ほとんど作り直しになってしまいます。
ラフなら、直すのは数分です。方向性のズレは、早いうちに見つけるほど、お互いにとって楽になります。
ラフで確認してもらうこと
【囲み】
- いちばん伝えたいことは、これで合っている?
- 載せる情報に、漏れや間違いはない?
- 写真やイラストの方向性は、イメージどおり?
- 全体の雰囲気は、ターゲットに合っている?
確認してもらうときのコツ
【囲み】
- STEP1・2で書いた5W1Hもいっしょに見せる(「なぜこの配置なのか」を説明しやすい)
- 「色や書体は清書で整えます」と一言そえる(ラフの見た目で判断されないように)
- 日時・場所・電話番号などの情報は、発注主に確認してもらう
STEP5:清書して、校正・チェックする
ラフが決まったら、パソコンで清書します。
清書に使うソフト
チラシは、WordやExcel、PowerPointなど、身近なソフトでも作れます。ただ、文字や写真を自由に置いたり、印刷会社に入稿したりするには、デザイン用のソフトのほうが向いています。
迷ったら、この2つから選びましょう。
【囲み】
- 有料なら:Adobeのソフト(チラシならIllustrator。写真の加工はPhotoshop)
- 無料なら:Canva
■ Canvaとは
Canva(キャンバ)は、ブラウザやスマホのアプリで使える、オンラインのデザインツールです。ソフトをインストールしなくても、すぐに使い始められます。
【囲み】
- チラシ・ポスター・SNS投稿などのテンプレートが豊富
- 文字や写真を、ドラッグ&ドロップで配置できる
- 無料プランでも、チラシ作りに必要な機能はひと通りそろっている
- 作ったデザインを、そのまま印刷注文することもできる
【ボタン:Canva公式サイト(https://www.canva.com/ja_jp/)】
Canvaの詳しい使い方は、別の記事で紹介します。
【ブログカード:Canvaの使い方(公開後にリンク)】
■ テンプレートを使うときの注意
テンプレートは便利ですが、そのまま使うと、伝えたいことが伝わらないチラシになりがちです。
【囲み】
- 情報の量が合わないときは、枠に合わせて削るのではなく、2つの5W1Hから考え直す
- 7:3の配分と、いちばん大きく見せるものが、自分のチラシに合っているか確認する
- 人気のテンプレートは、ほかの人のチラシとかぶることがある。写真や色を変えて、自分のチラシにする
6原則でチェックする
清書ができたら、前回の6原則でチェックしましょう。
【囲み】
- 近接:日時と場所のラベルと内容は、近づけた?
- 整列:見えない線に、そろっている?
- 強弱:7の部分のタイトルとキャッチコピーが、いちばん目立っている?
- 反復:見出しや項目の形は、そろっている?
- 簡単:要らない飾りや情報は、削った?
- 統一:色は3色程度、書体は2種類程度にまとまっている?
遠くから見てみる
完成したら、印刷して壁に貼り、2〜3歩離れて見てみましょう。
数秒でタイトルとキャッチコピーが目に入り、「何のチラシか」が分かれば合格です。スマホで撮って小さく表示してみるのも、同じ効果があります。
校正は、必ず自分以外の目で
チラシで一番こわいのは、デザインの失敗ではなく、情報の間違いです。
【囲み】
- 日付と曜日は合っている?(カレンダーで確認)
- 電話番号・URL・QRコードは正しい?(実際にかけてみる・読み取ってみる)
- 申込締切は、開催日より前になっている?
- 参加費・定員・持ち物は、主催者の決定と合っている?
- 地名・人名・団体名の漢字は正しい?
自分で作ったものは、間違いに気づきにくいものです。最後は、発注主や別の人にもチェックしてもらいましょう。
印刷会社に入稿するときは
【囲み】
- カラーモードをCMYKにする(画面と印刷の色の違いは、前回の記事の「2-1. 画面の色と印刷の色は違う」で解説しています)
- 背景や写真を、仕上がりサイズより3mm外まで広げておく(塗り足し)。断裁が少しずれても、白いすき間が出ません
- 写真は、印刷する大きさで300〜350dpi程度のものを使う
Canvaの場合、CMYKでのPDF書き出しは有料プランの機能になっています(2026年10月時点)。無料プランで作ったときは、Canvaの印刷サービスを使うか、入稿先の印刷会社に相談しましょう。
まとめ:デザインは、準備で7割決まる
【囲み】
- STEP0:作り始める前に、条件を確認する
- STEP1:受け手の視点で5W1Hを考える
- STEP2:チラシに載せる情報を5W1Hで整理する
- STEP3:ラフを7:3で描く(7=目を止める、3=じっくり読む)
- STEP4:ラフの段階で発注主に見てもらう
- STEP5:Adobe か Canva で清書し、6原則と自分以外の目でチェックする
デザインのセンスに自信がなくても、準備がしっかりできていれば、伝わるチラシは作れます。
ぜひ、次のチラシ作りで試してみてください。
【ダウンロード:チラシ作りの準備ワークシート(5W1H)PDF】(参考資料/ のワークシートを、カメラ講座の例に差し替えて配布する案)
